自我のメカニズム研究

エンジニア(職業的)な話

アイデンティティ・エントリーシステム(IES)の開発の投稿で、自我のメカニズムを究明していくことを私の生涯の研究テーマにしていきたいと思うようになってきたことをお伝えしました。
今、私が一番興味深いことは、どうしたら人造人間の脳に個人情報としての自我を埋め込むことができるかです。

会社をつくるの投稿では、IESの開発は自我のメカニズムが解明できない限り完結しません。
連載小説として『自我の発見』という題目でこのブログ掲載も始めましたが、その中の登場人物として日本人研究者の山崎剛(仮名)が2036年に自我のメカニズムを解明してノーベル賞が授与されたと書きました。私の推測ではあと10年ぐらいで誰かが発見するだろうと考えました。

たまたま私の住んでいる市営の小諸図書館で『AIに意識は生まれるか』(著者 金井良太)という本を見つけました。興味があったので貸し出しにて夢中になって読みました。著書の中で著者は、「AIで機能的な意識が実現されれば、そこには必然的に現象的な意識、すなわちクオリアが宿る」と考えています。このことを私から読者に説明するのには難しすぎるので感覚で捉えてください。前提となる公理なるものが意識の統合情報理論(IIT、Integrated Information Theory)としてあり、意識に関する様々な現象をきちんと説明できるかの途上にあると考えられます。例えれば、アインシュタインの量子力学のようなものです。このような背景で早ければ2020年代にはAIに意識が宿っている可能性はあるとのことです。このことを参考にすると、あと10年くらいの2036年という小説での設定はそんなにかけ離れた設定でもなさそうです。

この『AIに意識は生まれるか』を読んで、著者の研究者としての歩みに敬意を表したいです。若いころを物理学的な文学青年と称して、好奇心が推し進めた意識の解明へのアプローチは、私のこれからの生き方に参考になりました。

考えてみますと、自我のメカニズムの解明の前にもっと基本となる意識の解明へのアプローチがあるわけですが、もう少しこの著書から具体的なアプローチを確認していきたいと思います。

著者のアプローチでは以下のようなAIに人工意識を実装するための論点・道筋を導いています。
1.前述のIITの主流となる考え方では、現在のコンピューター内部の因果構造には意識は生まれないと予測しているが、自分へのフィードバック(情報の再帰構造)がないことで統合された情報量(φ)がゼロになってしまうことにもなっている。
2.大規模言語モデル(LLM、Large Language Models)のような系は、フィードバックがなく、逆のフィードフォワードしかないが、「自分」が動いていたら両者の本質的な違いはなくなる。だからLLMが意識を持つ可能性がある。
3.「意識のハードプロブレム」とは自然科学のように客観的に観察し分析して理解するような対象とは違い、主観的な意識を観測したり分析して理解できるだろうかという問題であるが、より狭い形の問いとして「物質としての脳がなぜ主観的な意識体験を持つのか」ということである。AIに人工意識を実装することにより、この問いを消滅させることにつながる。

まだまだ読者に私から説明するのは難しいに尽きるのですが、もう一つ重要な理論があります。
グローバル・ニューロナル・ワークスペース理論(GNW、Global Neuronal Workspace Theory)です。著者の説明ではいろいろな機能に特化したモジュール(世界モデル、クオリア空間、視覚、聴覚等)がたくさんある中で、グローバル・ワークスペースにアップされた情報(意識に上がった情報)は、他のモジュールとも共有され、柔軟に使うことができるということです。

このことは意識の解明へのアプローチから更なるステップとしての自我のメカニズムの解明へもつながっていくものと思います。つまりは世界モデルをDNAを宿した個人モデルに置き換えることが、今の私には自我のメカニズムと言える唯一の根拠であるからです。

自我のメカニズムの解明の前に人工意識作りを試みている著者の見解を拝読することができたのは、何か運命的なものを感じました。もしかしたらこの人が2036年に自我のメカニズムを発見し、ノーベル賞を授与される人ではなかろうかと。

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